大判例

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東京高等裁判所 昭和39年(行ケ)67号 判決

原告 株式会社三陽商会

被告 特許庁長官 倉八正

〔抄 録〕

よつて、本願商標が商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものであるかどうかについて判断する。

(一)(1) 「スコツチ」がウイスキーの品種名として有名なものであるとしても、それはまた他方において、これと相並んで、本願商標の指定商品に関連しても固有の意味をもつ観念であることも否定できないところであつて、すなわち成立に争なき乙第一ないし第三号証の各一ないし三の示すとおり、「SCOTCH」「スコツチ」といえば、英国スコツトランド地方の特産として発祥した紡毛糸の一種、またそれで作られたオーバー地等に適する特殊の毛織物の名称であることが認められ、そして現今繊維取引業者間で右の語が右の織物を指すものとして普通一般に用いられているのはもとより、舶来品を尊ぶわが国一般の需要者の間においても、右の原産地等についての仔細は別として、少くともそれが舶来品たる毛織物の一種、古くから名の通つた舶来の羊毛生地の名称であるという認識がよく浸透しているものであることは顕著な事実である。してみれば「SCOTCH」「スコツチ」の欧文字及び仮名文字を後半に配して成る本願商標を、その指定商品たるコートについて使用するとき、一般取引者、需要者に対し前記毛織物で作つていないコートについても右毛織物の製品であるとの観念を生ぜしめ、よつて品質の誤認を生ずるおそれがあるものといわねばならない。

(2) 原告は、「スコツチ」が毛織物の名称としてよりウイスキーの名称として、より一般的であることを強調して、本願商標に品質誤認のおそれがないというが、「スコツチ」の観念が一方においてウイスキーの品種名としていかに行き渡つたものであろうとも、それが本願商標の指定商品に関係のある毛織物についての著名、固有の観念の併存を許さぬ程度に支配的、独占的なものとなつていると認むべき根拠はなく、それには右後者の観念も現存していること前記認定の如くである以上、指定商品との関係を無視して、抽象的に「スコツチ」の観念がウイスキーと毛織物のいずれの名称としてより一般的であるかをせんさくすることは、本願商標の品質誤認のおそれの有無の判定には直接関係のないことというべきであつて、原告の右主張は理由がない。

次に原告は、現今コートの生地としては化学繊維等が一般的であり、需要者もその認識を有するから、本願商標に品質誤認のおそれはないという。しかし、もとより化学繊維その他毛織物以外のものがコート類の生地として使用される度合いが次第に増加している実状にあることは争えないにしても、毛織物がその生地として一つの本格的なものとされていることは今日においても何ら変りはなく、その実際の使用の状況においても、原告のいう如く、純粋の毛織物を用いることは極めて稀有であるなどとは、とうていいえない実状にあること明らかであつて、この点の原告の主張も採用できない。

(3) 原告のあげる二つの既登録例も、本願商標が品質の誤認を生ずるおそれのないものであるとする、原告の主張を支持するものでないことは、次のとおりである。

まず、登録第四三〇、一〇四号商標についてみるに、「SCOTEX」なる構成からすればそれは「スコーテツクス」または「スコテツクス」と観念されるであろうが、それは全くの造語であつて、これから直ちに「スコツチ」毛織物を印象ずけるものとはいえないものと考えられ、右商標が毛織物を指定商品として登録されたからといつて、これをもつて本願商標についての原告の主張に援用し得べき何ものも存しないというべく次に登録第五四二、一五四号商標について考えるに、傘の用途、機能等から、毛織物特にスコツチを生地とした商品傘が存在するとはまず考えられないところというのが実状と認められるから「SCOTCH」を含む右商標は指定商品を傘として品質誤認のおそれはないのであり、この点本願商標の指定商品たるコートにおいて、毛織物特にスコツチが前記の如くその本格的な生地の一つとされているのと比すべくもないのであるから、右商標の登録の事実も原告の主張を支持する資料とはならない。

(二) なお、原告は、原告会社は「サンヨー」あるいはそれを一部に含む商標をレインコート等を指定商品として有しており、「サンヨー」の名は原告会社の製品たることを示すものとしてすでに周知、著名となつているから、それに「スコツチ」を附加した本願商標も「スコツチ」は、「サンヨウ」にかくれて要するに原告会社の製品たることを示すのみの認識を世人に与えるものであつて、品質の誤認を生ずるおそれはないと主張するが、「サンヨー」がいかに周知、著名であろうとも、その故にこれに附した「スコツチ」が看過されるとは考えられず、かように有名であるとすれば「サンヨー」の「スコツチ」として一般に受け取られるものとみるのが相当であり、してみればコートを指定商品とする本願商標に品質誤認のおそれがあることに少くとも何の変りもないと認むべきである

(山下 多田 古原)

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